新芽が顔をだす。日毎に温かくなるにつれ、心も体も春のリズムを思いだし、爽やかな光と風の中を思いきりかけまわりたくなる。こんな時は気軽に出かけられる自転車がいい。自転車なら、目的地だけでなくそこへ行く道のりもいつもと違う視点で見られ、思い掛けない風景、知らなかった小樽との出合いが楽しめる。そんな期待を胸に小樽の自転車散策をすることにした。「坂の街小樽」だけに平坦な道はほとんどないが、だれにでも気軽にまわれるコースを選ぴ走ってみた。



小樽鉄道の発祥地手宮界隈
 スタート地点は、小樽最古の歴央跡「手宮洞窟保存館」。千宮ターミナルから徒歩で約10分、自転車だと約3分程の距離。この古代文字のような壁面彫刻が何を意味するのかは今だかって謎だが、見ていると大古の浪慢を感じ身震いがした。
小路を抜け、商店街へ。
 若いカップルが手をつなぎ入って行くアイスクリーム屋さんの前を通り抜け出た所は、ペテルブルグ美術館裏の浅草通り。左に見える運河は観光客で賑わい、ユニークな小樽観光が楽しめる人力車が客待ちをしている。山手方面へ曲がり、紳装・日銀・小樽バイン(中央バス社屋)など重厚な建築物が建ち並ぶ坂を一気にとばして、サンモールー番街ヘ。このあたりまで来ると、ロシア人らしき外人がレンタルサイクルのお買い物自転車で駆け回っている。大きな体とは不釣り合いな自転車でよく走れるものだと感心する。
きつい坂道をヨッコラショと登り、小樽を実感水天宮。
 水天宮の鳥居をくぐると、不思議な光景に遭遇する。鳥居の中の左側にお寺があり、その隣はなんと教会。ここは神と仏が棲む聖地なのかも知れない。鳥居の先の石段はさすがに自転車では登れないので迂回しようと向きを変えたとたん教会の鐘が鳴り、思わず立ち止まった。小学校の時、「チャイムは立ち止まって聞きなさい」といわれていた習性だ。鳥居の石側を下り、お社の正面へ 出る坂道を登るとまた5〜6段程の石段があった。もどるのも煩わしくそのまま自転車を持ち上げて登る。やっとの思いで境内にたどりつき、しばし小樽の眺望を楽しむ。水天宮の境内でロケーションを満喫して、呼吸も整ったら再び出発。


小樽再発見は小路を抜けて
 途中に「寿原邸」さらに左に石壇の塀に囲まれた「板谷邸」が見えてくる。昔の職人の技によって建てられ、幾年もの風雪に耐えてきた重みが伝わる。左の小さな公園のバッグに実然出現した光景に感動し、思わず声がでる。青い海を背景に小樽港、臨港線、そして堺町通りを一望する限りなく小樽らしい風景がそこにあった。小樽の街はずいぶん色々な表情をもっていて、立ち止まったり振り返ったりするたび、知らなかった風景に出合う。
海は小樽の歴史と旅の玄関口
 勝納大橋を渡り、勝納臨海公園に寄る。ベンチに腰掛けた家族連れや、昼体みの会社勤めらしき人達が昼食を食べていた。釣り人がのんびりと釣り糸をたらしている姿もあり、結構小樽市民に利用されている。夏になると道外からのライダーがテントを張っているが、「ここでキャンプをしてはいけません。」と注意書きの看板があるほどツーリング族には穴場的な存在だ。
 勝納公園でお昼ご飯を食べそこねたが、裕次郎記念館向いに「海賊家」というラーメン岸さんを発見。ライナスでラーメン屋さんを取材して以来、ラーメンの味にはちょっとうるさくなったが、自家製の赤味噌が「うん!」とうなずけるラーメンであった。車よりは遅いけれど、視界も広がり駐車場も要らない。自転車のスピードは小樽散策に程よい足となってくれる。また、日頃の運動不足や、ストレス解消にもピッタリ。天気の良い日は自転車で街へ繰りだしてみよう。小樽の街が輝いて見え、新鮮でなにか得した気分になれる。自転車に乗り、いい運動をした。汗を流したあとはビールが一番。早速「小樽地ビール」めざしてラストスパートをかけて自転車散策を終えた。